Taste of sweet-sourt love 02


気が付けば、傍にいるのが当たり前でキミなしじゃいられなくなっていた。
感謝してもしきれないこの気持ち…
人を好きになると、どうしてこんなにも苦しくなるのだろう。
『愛してる』と。
囁かれるたびに、心も身体も…すべてがキミの色に染まっていく――…。



『Taste of sweet-sourt love -後編-』




総士を抱きしめている腕はそのまま、一騎はカメラのレンズをこちらに向けて何度もシャッターを切っていた。
つまり、それは さながら恋人達が寄り添っているかのような体勢なわけで…
一体 何枚撮るんだ…と思いつつも、抜け出せないでいるのが現実。
「一騎、もういいだろう」
ぐいぐいと一騎の体を押しても、一向に解放してくれず きつく抱きしめられたまま。
本気で突き飛ばせばいいものの、それが出来ないのは一騎の鼓動がとても心地良い所為もあるのだろう。
ずっとずっと抱きしめられていたい…。そう思うけれど、今はこれ以上一騎の傍に居ると どんな写真を撮られるか堪ったもんじゃない。
「……なぁ、総士」
「何だ?」
ふと問い掛けてきた一騎を見上げれば、その瞳は明らかに何かを企んでいる瞳だった。
何だか…凄く嫌な予感がする。
「俺、キスしてるとこの写真が撮りたい」
「?!」
案の定、一騎は何ともおめでたい事を言い出してきた。
そんな写真を撮って何になる?恥ずかしい事この上ないではないか。
一体、何を考えているんだ…一騎は。
「だめ?」
「な!当たり前だろう!」
冗談じゃない。抱きしめられてる写真でさえ恥ずかしいのに、キスをされてるところの写真なんて…
どこをどうしたら そんな考えが浮かんでくるのか。
総士には不思議で仕方がなかった。
総士が思うに、何だか付き合い始めてから一騎のとる行動が大胆になってきたように思う。
遠慮がないと言うか…いつも恥ずかしい事ばかりな気がする。
「いいじゃん!一枚くらい」
「嫌だ!そんな恥ず…っ…!」
お約束というか、総士にも学習能力がないと言うか…。
顔を上げた隙に、あっさりと総士の唇は一騎によって奪われた。
いきなり合わさった唇は、早急に逃すまいと無遠慮に総士の口内へと進入していく。
「…んんっ…ゃ…ン、んぅ…!」
こうなってしまっては、もう総士に勝ち目はない。
いつもいつも こうして総士は一騎に丸め込まれてしまうのだ。
どんなに抗っても、それはただ単に一騎を喜ばすだけで何の意味も持たない。
頭では分かっているけれど、それでも一騎の好きにされるのが何だか悔しかった。

パシャッ。

すぐ耳元でシャッター音が聞こえるけれど、今それを如何こう出来る術を総士は持たない。
ただ、もう…今は一騎を受け入れる事で精一杯だった。
「…ぁ…は……ふ、ぁっ…」
ようやく離された唇からは、互いを祝福するかのように一本の銀糸が二人を繋ぐ。
飲み干しきれなかった唾液は総士の顎を伝って流れ落ち、目の前では満足そうに満面の 笑みを浮かべている一騎がじっと総士を見つめていた。
「なかなかイイ写真が取れたぞ、総士」
「…………」
あまりにも無邪気に、本当に嬉しそうに言うものだから、怒りを通り越して総士は呆れるしかなかった。
何か一言、がつんと言ってやりたかったけれど、そんな気も一気に失せる。
「…一騎……その写真、どうするつもりだ?」
まさか、いくら一騎でもそこまではしないだろう…と、最悪な事態を考えつつも問うてみた。
これでもし、今頭に過ぎった最悪な事態が起きてしまったら、当面はキスもSEXも禁止してやる。
一騎も一騎なら、総士も総士でなかなか頑固なところも有り、言い出したら聞かない所もあった。
「んー…、みんなに自慢する?」
そんな総士の考えを知ってか知らずか……さらりと言ってのける一騎。
やっぱり、と言うか何と言うか…考えていた最悪な結果をあっさりと言ってしまった一騎に、 少しでも違う答えを期待していた自分がバカみたいだ。
「かず…っ!」
「なんてね」
途端に暗転する目の前の景色。
背中には柔らかいソファーの感触があって、目の前の一騎の姿の向こうには壁ではなく天井が見える。
「こんな可愛い姿の総士、勿体無くてみんなに見せれるもんか」
「…バカだろ…お前」
「何とでも。総士は俺だけのモノだもん」
そう言って、今度は優しく総士の唇を塞いだ。
しっとりと甘く、柔らかい総士の唇。これでも同じ男なのか…と思えるほど、細くて白い肢体。
それらの全ては一騎の為に。
そして、そんな総士をしっかりと受け止め、常に総士の傍らとなる一騎は総士の為に。
―――互いが存在する。

「一騎…好きだよ」
まさか総士から好きなんて言ってもらえるとは思っておらず、一騎は驚きのあまり まるで鳩が豆鉄砲をくらったようなマヌケな顔をしてしまった。
いつだって、総士は恥ずかしそうにしてその一言を言ってはくれなかったのだ。
そんな総士が言ってくれたのだから、一騎の心はそれだけでもう舞い上がってしまっていた。
「総士、愛してるよ」
自然に重なり合う互いの唇。互いの身体。
素直になれず、なかなか熟せなかった果実は、今 赤く染まって熟れ果たす。







後日、一騎が総士の部屋に訪れると、壁にかけられてた写真の他にもう一枚…
机の上に写真立てが増えていて、そこには以前一騎が撮った写真が一枚飾られていて。










―――――Thank you for being born…。



飾られていた写真には、一言……そう書かれていた。










END






場違いながらも、今回も参加させて頂きました。
前回の不燃焼を燃焼しようと思ったのですが…やっぱ無理でしたよ…
どこが誕生日なんだか…
って言うか、一騎が変態でスミマセン(笑)

えー、前回同様、期間限定(11月8日・9日のみ)でフリーと致します。
こんなんでも欲しい人が居ましたら、どうぞお持ち帰り下さい。
報告等は一切不要です。(して頂けたら嬉しいですが)
尚、期間後のお持ち帰りはご遠慮下さい。


2005・11・8